論文紹介が続いていますが、前回の【論文紹介】オメガ3系脂肪酸は高齢者の筋肉維持に役立つに関連して今回も高齢者の健康に関する論文をご紹介します。
●高齢者への低強度運動のすすめ
低強度の運動であっても1週間あたり300分程度の運動を行えば、65歳以上の高齢者にとって健康効果をもたらしうる可能性があるという内容の研究報告です
【目的】
2010年にWHOが刊行した「Global Recommendations on Physical Activity for Health(健康のための身体活動に関する国際勧告)」によると、65歳以上の高齢者には1週間当たり以下のいずれかの運動が推奨されている。
・150分の中強度有酸素性身体活動行うこと
・75分の高強度有酸素性身体活動を行うこと
・上記と同等の中~高強度の活動を組み合わせて行うこと
しかし、高強度運動はかかりつけ医などに許可を得てから行う必要があったり、ケガのリスクなどの健康に対する悪影響も心配されるため、運動強度がより低い場合でも同様の効果があれば高齢者の負担が軽減される。
そこで本研究では、アメリカ人の65歳以上の高齢者について、客観的な評価方法による生活習慣の低強度身体活動(LLPA)、中強度身体活動(MVPA)と様々な生物学的マーカー、慢性疾患との関連性を調べる。
【対象】
アメリカ人の65歳以上の高齢者1,496名
【方法】
2003年から2006年の国民健康栄養調査( NHANES ) のデータを用いて検討を行った横断研究。
参加者は、4日間以上加速度計を身に着け、慢性疾患などの情報を評価するためのアンケートに回答した。
また、血液によって生物学的マーカーを検査した。
【結果】
・1週間に300分以上のLLPAを行った高齢者は300分未満の高齢者と比較して、BMIやウエスト周囲、C反応性タンパク質(CRP:炎症や組織細胞の破壊によって増えるタンパク質)、インスリン抵抗性が低かった。
・1週間に300分未満のLLPAを行った高齢者は300分以上した高齢者よりも1.18倍以上も慢性疾患を持っていた。
【まとめ】
少なくとも1週間に300分以上低強度運動することで、高齢者に有益な健康効果をもたらしうる可能性がある。
<論文要旨>
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24575724
低強度運動の例としては
・ゆっくりした歩行
・家事
・ストレッチング
・ヨガ
・キャッチボール
・ギターやピアノなどの楽器演奏
などがあります。
1週間に300分以上ということは、1日に45分程度無理のない範囲で体を動かすだけで良いので高齢者でも実行しやすいですね
可能であれば、現行のガイドラインが推奨している中強度運動をした方が良いですが、そういった運動が難しい方の場合には、何か機会があるごとに意識して身体を動かすことで、何もしないよりも健康的になれる可能性があります
是非、高齢者の皆様には低強度運動を積極的に行っていただきたいですね
(さ)
<参考>
・リンク・デ・ダイエット 世界の最新健康・栄養ニュース
・厚生労働省HP
・国立研究開発法人 国立健康・栄養研究所HP (http://www0.nih.go.jp/eiken/programs/kenzo20120306.pdf)