普段、皆様からのお問い合わせを受けていても感じますが、ダイエットに関心のある方が多いですね
ダイエットと言えば「体についている脂肪を燃やす」事が大切ですが、体についている脂肪細胞は一種類ではありません
そこで今回は「体についている脂肪細胞の種類」を簡単に紹介したいと思います
●白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞とベージュ細胞
私たちの体の中にある「脂肪」と聞いて皆様が思い浮かべるのは、おそらく「白色脂肪細胞」のことです。
しかし、脂肪細胞の中にはエネルギーをため込むばかりではなくエネルギーを消費するような「褐色脂肪細胞」や「ベージュ細胞」が存在しています
【白色脂肪細胞】
「単胞性脂肪細胞」とも呼ばれ、細胞内には大きな脂肪滴がひとつあり脂肪をたくわえる役割をしています。
体内の脂肪細胞のほとんどは白色脂肪細胞で、脂肪細胞は多彩な生理活性物質(アディポサイトカイン)を分泌しています。
肥満に伴って大型化した白色脂肪細胞が増加すると脂肪細胞は機能不全に陥り、善玉であるアディポネクチンの分泌低下やレプチンの抵抗性が現れ、悪玉のTNF-αなどの分泌が増加して生活習慣病の発症につながります
※アディポネクチンとは
傷ついた血管壁を修復して動脈硬化を予防する他、インスリンの働きを高めるたり血圧低下作用などがあります
※レプチンとは
食欲を抑える働きをし、たくわえている脂肪が増加すると分泌が高まって食欲を低下させ、肥満を予防します。
レプチンについては以前ブログで詳しくまとめたことがあるため、是非参考にしてみてください
⇒レプチンについて
※TNF-αとは
炎症を引き起こす物質のひとつで、インスリンの働きを妨げる作用があります。
【褐色脂肪細胞】
「多胞性脂肪細胞」とも呼ばれ、細胞内には中小の脂肪滴が多数あり、脂肪を燃焼して熱を産生します。
褐色脂肪細胞は首や肩甲骨のまわりなど、体のごく一部にしかありません。
また、乳幼児には比較的多いものの、成長するにつれて少なくなるとされています
脂肪を燃焼して熱を産生するのはミトコンドリアで、褐色脂肪細胞にはこのミトコンドリアが多く存在します。
ミトコンドリア内で熱産生に関わっているのがミトコンドリア内膜に存在する脱共役タンパク質 UCP-1 (uncoupling protein-1) であり、この働きによりエネルギー(ATP)の代わりに熱を産生します
ミトコンドリア内膜にはATPを産生する電子伝達系も存在していますが、UCP-1も電子伝達系も水素の濃度勾配によってそれぞれ熱やATPを作り出します。
褐色脂肪細胞はこのUCP-1の発現量が多いため、脂肪が熱に変換されやすくなるのです
また、脂肪細胞は肥大化しないため、アディポサイトカインの分泌は正常です。
<ミトコンドリアでの熱産生の流れ>
【ベージュ細胞】
白色脂肪細胞に混在し、「褐色脂肪類似細胞」や「ブライト細胞」とも呼ばれています。
白色脂肪細胞や褐色脂肪細胞と異なる独自の遺伝子発現パターンを示しますが、寒冷やノルアドレナリンなどの刺激によりcAMPと呼ばれる物質が増加し、cAMPによってUCP-1が高発現して褐色脂肪細胞と同様に熱産生を行います
また、ベージュ細胞は運動により筋肉で発現が増加するイリシンというペプチドホルモンに高い感受性を持つことが知られており、イリシンを過剰に発現させたマウスでは肥満が抑制されたという報告があります
褐色脂肪細胞と同様に脂肪細胞は肥大化しないため、アディポサイトカインの分泌は正常です。
白色脂肪細胞をベージュ細胞に変えることができれば、熱産生がアップして基礎代謝が上がります
UCP-1の発現は、寒冷刺激や運動の他にフコキサンチンやDHA、EPA、オレウロペイン(オリーブ葉)、カプサイシン、カフェインなどの栄養素でも増やすことができると分かっています
代謝が良くない方、ダイエットしたい方は、ちょっと寒さを我慢してみたり、運動したり、上記の栄養素を摂取してみるものお勧めですよ
(さ)
<参考>
・厚生労働省 e-ヘルスネット
・筑波大学大学院人間総合科学研究科 生命システム医学専攻 遺伝子制御研究室HP
・肥満の化学[Ⅱ]肥満のメカニズム 4.エネルギー代謝調節機構-UCPを中心に
・星薬科大学HP
・Cell. 2012 Jul 20; 150(2): 366–376.
・オリザ油化HP