先日メディアに「スルフォラファン」が取り上げられたようで、お客様よりスルフォラファンについてお問い合わせをいただきました
そこで今回は、「スルフォラファンとは何か?」について簡単にまとめたいと思います
●スルフォラファンについて
ブロッコリー、キャベツ、ダイコン、ワサビなどのアブラナ科植物にはグルコシノレートと呼ばれる成分が含まれ、グルコシノレートは、すりおろしたり噛んだりすることで野菜の細胞内に含まれる分解酵素(ミロシナーゼ)と混じりあい、イソチオシアネートと呼ばれる辛味成分に変化します。
スルフォラファンはこのイソチオシアネートの一種の含硫化合物で、特にブロッコリー(新芽:スプラウト)に高濃度に含まれています
<スルフォラファンができるまで>
●スルフォラファンの効果
スルフォラファンには様々な効果が期待されていますが、主要な効果について以下にまとめます
【抗酸化作用】
正常な細胞には、Nrf2と呼ばれる酸化ストレス応答などの生体防御で中心的な役割を果たしている転写因子が存在しています
細胞が酸化ストレスを受けたり毒物にさらされると、Nrf2はDNAに結合して生体防御に重要な遺伝子を発現させ、抗酸化タンパク質や解毒酵素が誘導されて細胞の障害が最小限にとどめられます。
スルフォラファンにはこのNrf2を活性化する働きがあるため、間接的な抗酸化作用があると言われています(Biochem Pharmacol. 2013 May 1; 85(9): 1398–1404.)。
【抗消化管がん作用・ピロリ菌】
スルフォラファンが豊富に含まれるブロッコリースプラウトの摂取が、①ピロリ菌感染マウスとピロリ菌感染者における胃炎の軽減、②発がん剤によって起こるマウスの大腸腫瘍とヒトの大腸腺腫発症を抑制するかについて検討したところ、ブロッコリースプラウトの継続摂取でマウスとヒトにおいてピロリ菌による胃炎軽減効果がみられ、マウスにおいて大腸腫瘍発症予防効果が確認されたという報告があります(JJCAM 4(1), 9-15, 2007 )。
この結果より、スルフォラファン含有食品による胃癌・大腸癌の発症予防の可能性が示されています。
【解毒作用】
スルフォラファンの構造中には硫黄(S)が含まれています。
<スルフォラファンの構造>
硫黄には、水銀や鉛などの有害ミネラルをカニのハサミでつまむように捕まえて(キレート)排泄させる働きがあるため、スルフォラファンには解毒(デトックス)作用が期待されています。
また、上記の【抗酸化作用】に出てきたNrf2によって解毒酵素ができるため、間接的なデトックス効果も期待できます。
【肝機能改善】
3種の肝機能マーカー(AST、ALT、γ-GTP)のいずれかの値が高い男性52名を対象にしたした二重盲検プラセボ比較試験において、スルフォラファングルコシノレートを1日30㎎で2か月間摂取した方では、主要な肝機能マーカーであるALTとγ-GTPの値が有意に改善したという報告があります(カゴメ株式会社HP)。
この結果より、スルフォラファンを継続的に摂取することが肝機能の改善に有効である可能性があります。
※スルフォラファングルコシノレートは体内で分解されることでスルフォラファンに変わります。
スルフォラファンには様々な良い効果が期待されていますね
でも、上記のような効果はスルフォラファンに限ったことではありません。
また、人はビタミンやミネラルを摂取しないと生きられないですが、スルフォラファンがなかったら死んでしまうということはありません
普段から外食や加工食品ばかりで食事を済ませているような栄養不足の人は、スルフォラファンを摂取する前に他に補わなければならない栄養素があります
目新しい栄養素に惹かれる気持ちも分かりますが、もっと大切な栄養素であるビタミン、ミネラルの重要性に気づく人が増えてほしいと思う今日この頃です
(さ)
<参考>
・独立行政法人 国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報
・文部科学省HP
・国立研究開発法人 科学技術振興機構(http://nikkajiweb.jst.go.jp/nikkaji_web/pages/top.jsp?CONTENT=syosai&SN=J13.479A)
・RIKEN NEWS No.313 July 2007(http://www.riken.jp/~/media/riken/pr/publications/news/2007/rn200707.pdf)