前回のブログは「胎児・乳児の栄養と疾患の起源(DOHaD)」と題し、胎児期や乳児期の生活環境と、成長後の疾患との密接な関わりについての研究であるDOHaD(ドハド)をご紹介しました。
今回は、DOHaDに関連した興味深い論文を発見しましたので、そちらをご紹介したいと思います
●妊娠早期に妊娠糖尿病になった女性の子は自閉症リスクが高い
「妊娠26週までに妊娠糖尿病と診断された女性の子は早めの自閉症スペクトラム障害(ASD)検診が必要かもしれない」という内容のコホート研究による報告です
【目的】
妊娠中に妊婦さんの体調がどの時点で悪化した場合に胎児に影響が出るのか、という内容についてはほとんど報告がないため、妊娠糖尿病と子どものASDとの関連についての情報は限られている。
そこで、妊娠前からの2型糖尿病と妊娠糖尿病での子宮内暴露による子どものASDリスクの関連性について評価する。
【対象】
カイザー パーマネンテ 南カリフォルニア病院で1995~2009年の間に産まれた322,323人の単胎分娩された子ども
【方法】
調査期間は、1995~2009年の間に産まれてから2012年12月31日まで。
母親の状態を以下のように分け、産まれた子どもの自閉症リスクを調べる大規模なコホート研究を行った。
<母親の状態による分類と人数>
・妊娠前から2型糖尿病の人(2型糖尿病): 6,496人
・妊娠26週かそれ以前に妊娠糖尿病と診断された人(妊娠糖尿病≦26週): 7,456人
・妊娠26週以降に妊娠糖尿病と診断された人(妊娠糖尿病>26週): 17,579人
・妊娠糖尿病と診断されなかった人(妊娠糖尿病の診断なし): 290,792人
【結果】
調査中、3,388人の子どもが自閉症だと診断された。
その内訳は以下の通り。
・2型糖尿病の母体から産まれた子:115人
・妊娠糖尿病≦26週の母体から産まれた子: 130人
・妊娠糖尿病>26週の母体から産まれた子: 180人
・妊娠糖尿病の診断なしの母体から産まれた子: 2,963人
上記の結果において、誕生年調整後の危険率は以下の通り
・2型糖尿病の母体から産まれた子:1.59
・妊娠糖尿病≦26週の母体から産まれた子: 1.63
・妊娠糖尿病>26週の母体から産まれた子: 0.98
◆妊娠糖尿病≦26週の母体から産まれた子については、ASDとの有意な関連性がみられた。
◆母親の年齢、出産回数、教育、家計収入、人種や民族性、併存疾患などの病歴、子どもの性別、妊娠前からの2型糖尿病は、子どもの自閉症リスクと有意な関連性はみられなかった。
◆母親や兄弟の自閉症の有無、母親の喫煙、妊婦のBMI、妊娠中の体重増加は結果に影響していなかった。
以上より、妊娠26週までに母親が妊娠糖尿病と診断されることは、子どもの自閉症リスクと関連する可能性があるかもしれない。
また、症例対照研究ですが、「妊娠中の糖尿病や高血圧、肥満などの代謝異は子どもの自閉症や発達遅延などの発達障害と関連する可能性がある」という内容の報告もあります
<論文>
https://pediatrics.aappublications.org/content/129/5/e1121
この研究ではカリフォルニアで生まれた2~5歳の子ども1,004人を対象に調査が行われています。
結果としては、妊娠中の代謝状態の悪化が自閉症や発達遅延などのリスクファクターとなる可能性が示唆されています。
両試験とも無作為抽出比較対照試験ではないので信頼性は薄いですが、妊娠中に代謝異常を起こすことは良いことではなさそうです
もちろん妊婦さんの痩せすぎも良くないですが、お菓子や菓子パンなどの甘い食べ物や、ご飯、パン、麺類などの炭水化物ばかり摂取するような食生活で体重を増やし、代謝異常を起こすことも避けるべきです
現代の若い女性は基本的に様々な栄養素が足りていません
妊娠してから食生活を急に変えることは難しいと思いますので、特に妊娠を希望しているような方については普段の食生活を見直す必要がありますね
(さ)