口(口腔)は、外部からの物質(食べ物など)を体内に取り込むゲートとしてとても重要であり、病気や健康と密接に関わっていると言われています
今回は、そんな口腔内の環境と健康との関係についてまとめます😄
目次
増加傾向のある口腔内の疾患
口腔内の疾患と言えば「虫歯」を思い浮かべる方が多いですが、その他にもドライマウス(口腔乾燥症)や歯周病、口腔内炎症(口内炎や舌炎など)、口臭などの疾患は、環境や生活習慣が変化している現代人で増加傾向にあると言われています。
特にドライマウスや歯周病は増加しており、糖尿病や肥満症と並んで生活習慣病のひとつであるという考え方が広まってきています。
唾液の役割
ドライマウスや歯周病、口臭の主な原因には「唾液の分泌低下」が挙げられます。
唾液の成分は99%以上が水分で、残りの1%弱がミネラルや糖タンパク質、酵素、抗体などで、これらの成分が以下のようなとても重要な働きをします。
唾液の働き
①抗菌作用
「ラクトフェリン」や「リゾチーム」などの抗菌物質が存在しているだけでなく、「IgA抗体」や抗菌作用のあるペプチドである「ベータディフェンシン」も含まれているため、歯周病菌やその他の有害菌が体内への侵入を防御してくれます。
②潤滑・粘膜保護作用
粘性のタンパク質である「ムチン」が含まれています。
このムチンによって、食べ物が覆われると食べ物が飲み込みやすくなるだけでなく、粘膜が覆われることで様々な刺激や乾燥などから守られます。
③pH調整・再石灰化作用
口腔内がpH5.5以下の酸性に傾くと、歯の一番外側を覆っているエナメル質が溶けて虫歯になりやすくなります。
唾液中にはpHを調節する作用のある「重炭酸塩」や「リン酸塩」が酸を中和するだけでなく、「ムチン」にも唾液のpHを調節する作用があります。
pHが中性になるとエナメル質の再生(歯の再石灰化)が進みますが、唾液中にはカルシウムやリン酸などのミネラル成分が含まれており、この成分によって再石灰化が起きます。
※歯の表面に歯垢(プラーク)がたまっていると、再石灰化の際にプラークも石灰化されるため歯石となってしまいます。
④食道の保護作用
唾液は1日に1L以上分泌されると言われていますが、飲み込まれた唾液によって食道内が洗浄・中和され、胃から逆流した胃酸から食道粘膜を保護してくれる働きがあります。
⑤消化作用
炭水化物を消化する酵素である「アミラーゼ」が含まれており、消化を助ける働きがあります。
唾液の減少理由
唾液が減ってしまう原因の一部としては以下の通りです。
・薬剤の副作用(降圧剤、利尿剤、抗ヒスタミン剤、抗うつ剤、鎮痛剤など)
・加齢による性ホルモン低下↘
・神経性(ストレス、交感神経優位)
・シェーグレン症候群
・全身疾患(糖尿病、腎臓疾患、貧血、高血圧症など)
・口呼吸の増加
・咀嚼回数の減少↘
・喫煙🚬
唾液の分泌量を増やすには?
唾液の分泌量を増やすには、上記の唾液の分泌を減らしてしまう原因を取り除くことが大切です。
例えば、「ストレス(交感神経優位)を緩和させるような生活を意識する」「口呼吸ではなく鼻呼吸をする」「咀嚼回数を増やす」などがお勧めです
また、栄養素の摂取でも唾液の量を増やすための研究が行われています。
ビタミンCやクエン酸
ビタミンCや、梅干しやレモンなどに豊富なクエン酸は酸味が強く、唾液の分泌量を増加させます。
コエンザイムQ10(CoQ10)
ドライマウス患者がCoQ10を摂取した試験では、プラセボ群と比較して唾液の分泌量が増加したとの報告があり、CoQ10の摂取で唾液の分泌機能を増進が期待されます。
ポリグルタミン酸
ポリグルタミン酸の溶液で口腔内をゆすぐと、生理食塩水と比べて唾液量が有意に増加したとの報告があります。
唾液の分泌量低下の原因が薬剤の副作用や加齢、シェーグレン症候群などでない場合、その多くは生活習慣を改善することで回復が見込める可能性があります。
生活習慣を改善して糖尿病や高血圧などの生活習慣病を防ぐとともに、唾液の分泌量を増やして口腔内を健康に保ちたいものです。
次回は、口腔内環境と健康のうち虫歯や歯周病について着目してまとめたいと思います💡
(さ)
厚生労働省平成23年患者調査の概況
日本口腔検査学会誌,1(1):40-43
ゼリア新薬工業株式会社HP
森永乳業株式会社資料
ライオン株式会社HP
Clinical Biochemistry, Volume 44, Issues 8?9, June 2011, Pages 669?674
九州歯科大学口腔機能発達学講座研究報告