前回は「腸内環境と免疫について②」と題して、免疫システムと腸の関係についてまとめました
免疫ってとても難しい内容ですよね
作用機序が複雑である上に、普段使用しない単語がたくさん出てきます
そこで今回は、「免疫について説明する時によく出てくる細胞など」について簡単にご説明します
●免疫に関わる細胞などの説明
・アレルゲン
花粉やダニなどの免疫反応を起こす原因となる抗原の中で、アレルギー反応を引き起こす抗体を作るもの。
・樹状細胞
皮膚や粘膜などに多く存在し、細胞やウイルス、アレルゲンなどの抗原を見分ける細胞。
抗原を食べて消化し、その存在をリンパ節にいるヘルパーT細胞に伝える(抗原提示)。
また、ナイーブT細胞に接触してヘルパーT細胞に変化させる働きもある。
その時、抗原に対する免疫応答を増強する物質(アジュバンド)の種類によってヘルパーT細胞は1型になったり2型になったりする。
・ナイーブT細胞
抗原に接触したことのないT細胞のこと。
樹状細胞を介して抗原と接触した後で1型や2型などのヘルパーT細胞に変化する。
子供の頃に細菌やウイルスなどの1型ヘルパーT細胞を増やすようなアジュバンドに接触する機会が少ないと2型ヘルパーT細胞に変わるため、アレルギー体質になると言われている。
また、大人になると数が減ることが分かっている。
・1型ヘルパーT細胞(Th1)
特にウイルスなどの感染情報を樹状細胞から受け取ったナイーブT細胞がが変化してできる。
Th1には、B細胞に細菌やウイルスを効率よく攻撃する免疫グロブリンG(IgG)を作らせるなどの働きがある。
・2型ヘルパーT細胞(Th2)
アレルゲンの情報を樹状細胞から受け取ったナイーブT細胞が変化してできる。
Th2には、B細胞にアレルギーの原因となる免疫グロブリンE(IgE)を作らせるなどの働きがある。
・炎症性ヘルパーT細胞
主に細菌感染の情報を樹状細胞から受け取って増殖する。
組織に強い炎症を起こし、自己免疫疾患にも関係すると言われている。
また、アレルギー疾患にも関係し、樹状細胞がアレルゲンを食べた時に別の強い刺激が加わると、ナイーブT細胞が変化してできる場合がある。
・キラーT細胞
ウイルス感染細胞やがん細胞などを見分け、それらを殺傷するT細胞。
最近では、細胞傷害性T細胞(CTL)と呼ばれることが多い。
・制御性T細胞
ヘルパーT細胞の働きを抑える働きをし、アレルギー疾患発症の抑制に関係する。
・B細胞
Th1やTh2から情報を受け取り、IgGやIgE、IgAなどの免疫グロブリンを作る。
・マスト細胞
皮膚や粘膜に多く存在し、中味には顆粒が詰まって膨れ上がったような形をしているため、「肥満細胞」や「顆粒細胞」とも呼ばれている。
IgEを介してアレルゲンと反応した後顆粒中のヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症性物質を放出してアレルギー反応を起こす。
・マクロファージ
白血球のひとつである単球からできる。
内部には顆粒を含み、顆粒中には酵素やその他の物質が詰まっていて、これらが細菌などをやっつけて消化するのを助ける。
マクロファージは感染した組織内にとどまり、細菌、外来細胞、損傷した細胞、死んだ細胞などを食べる[貪食(どんしょく)]。
また、白血球を感染部位に引きつける物質であるサイトカインを分泌するだけでなく、T細胞が異物を認識するのを助ける。
・好中球
白血球の中で最も多く、感染防御において最初に働く免疫細胞のひとつ。
好中球にも顆粒が含まれ、顆粒中には細菌などを貪食した後にこれらを殺したり消化したりするのを助ける酵素が含まれる。
普段は血流を循環しているが、細菌や障害を受けた組織などから発信される特別な信号を受けると、血流を離れて組織に入り込む。
また、周囲の組織中に線維をつくる物質を放出し、繊維が細菌を捕え、細菌が体内に広がるのを防ぐ。
・好酸球
白血球のひとつで内部に顆粒を含み、寄生虫に対する感染防御で働き、遅延型アレルギーにも関わっている。
細菌を捕食し、捕食するには大きすぎる異物も殺傷するだけでなく、癌細胞の破壊も助ける。
・好塩基球
白血球のひとつで内部に顆粒を含み、、マスト細胞と同様の働きをすると言われている。
顆粒中には、アレルギー反応に関わる物質であるヒスタミンを含み、アレルゲンに出会うとヒスタミンを放出し、傷ついた組織への血流量を増やす。
また、好塩基球は好中球と好酸球を問題のある部分に引き寄せるサイトカインを作る。
・ナチュラルキラー細胞
形成された瞬間から外敵を殺す能力を備えているためにナチュラルキラー細胞と呼ばれている。
細菌などに付着し、酵素などの物質を放出して相手の膜を破壊し、ある種の微生物や癌細胞、ウイルス感染細胞などをやっつける。
ウイルス感染への最初の防御において特に重要で、さらに、T細胞やB細胞、マクロファージなどの働きをコントロールするサイトカインを作り出す。
・サイトカイン
体内で抗原が見つかった時に白血球や特定の細胞が作り出す免疫システムの情報伝達物質のこと。
サイトカインには多くの種類があり、免疫システムを活性化したり抑制したりすることで、それぞれ免疫システムのさまざまな働きに影響を及ぼす。
サイトカインには、インターフェロンやインターロイキン、トロンボポエチンなどがある。
※免疫グロブリンについては前回のブログ「腸内環境と免疫について②」をご覧ください。
●図による免疫細胞などの説明
次回は、今の時期悩まれている方が多い花粉症のメカニズムなどについてご紹介できればと思います
(さ)
<参考>
・アレルギーはなぜ起こるか(著:斎藤博久)
・老年医学の展望 48:205「老化と免疫」
・体の中の外界 腸の不思議 (著:上野川修一)
・メルクマニュアル医学百科 家庭版
・明治ヨーグルトライブラリー