先日、NHKのテレビ番組で「腸内フローラ※」について取り上げられましたが、最近、改めて「腸内環境」に注目が集まっています
※腸内フローラとは、腸管内に生息する多種多様な細菌の集まりを言い、「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」とも呼ばれます
そこで今回は、「腸内の免疫システムや腸内細菌」についてまとめたいと思います
●腸の働き
腸の働きは、食べ物の消化・吸収だけではなく、外界の敵から体を守ることが挙げられます
消化管に侵入してきた物質を体内に入れても良いかどうか判断し、良いものを吸収、望ましくないものは免疫細胞(マクロファージ)や抗体(IgA)などが撃退するのです。
この腸の機能は「腸管免疫」と呼ばれ、腸内環境が大きく関わっています
そのため、腸内環境が乱れることで免疫機能が低下してしまうと言われています
●善玉菌について
私たちの腸内環境を整えてくれる微生物を「善玉菌」と呼びます。
善玉菌の代表的なものはビフィズス菌と乳酸菌です。
それぞれの違いを簡単に説明すると、ビフィズス菌は「糖を分解して乳酸と酢酸を作り出す菌」で、乳酸菌は「糖を分解して50%以上の乳酸を作り出す菌」を指します。
乳酸菌とビフィズス菌の違いの詳細については以前まとめていますので、是非そちらをご覧ください
「乳酸菌とビフィズス菌は全然違う!」
ビフィズス菌は乳酸だけでなく酢酸も作り出すため、乳酸菌よりも大腸菌(悪玉菌)の抑制作用が強く、ある菌種では、アレルギーの原因となるIgG抗体の抑制作用が高いものも発見されています
この他、ビタミンB群やビタミンKなどの栄養素を産生することが分かっており、善玉菌は便通を良くするだけでなくだけでなく、私たちの健康には欠かせないものなのです
ちなみに、ビフィズス菌や乳酸菌といってもその菌種はいくつも存在します。
ヒトと動物では腸内に生息する菌種が全く異なりますが、実はヒトの中でも乳児期と成人期では腸内細菌の顔ぶれが異なり、一般的には加齢とともに腸内のビフィズス菌は減少していきます
海外の乳製品では動物由来のビフィズス菌を使用した商品が多いようですが、日本ではヒト由来のビフィズス菌を配合した商品が数多く販売されています。
やはり、ヒトにはヒトのビフィズス菌
免疫力を高めるためには、動物よりもヒト由来の方が有効かもしれないですね
●乳児の腸とアトピー性皮膚炎
一般的に、出生直後の新生児の腸は無菌状態であると言われています
外界の敵に初めて触れる新生児は免疫機構が発達する大切な時期で、生後約1週間経った子の腸内はビフィズス菌が占めていることが知られています。
ある研究では、出産を4週間後に控えた妊婦さんにビフィズス菌を摂取してもらい、さらにその母親から生まれた乳児に母親と同じビフィズス菌を6か月間だけ与えて、乳児が1歳半になるまで調査をしています。
その結果、ビフィズス菌を摂取した群と摂取していない群を比較すると、摂取した群の方が乳児のアトピー性皮膚炎や湿疹の有病率が有意に低いことが分かりました。
(第24回日本アレルギー学会春季臨床大会2012年)
乳児の免疫力を強くするためには、まずは母親の腸内環境を整えることが大切ですね
●高齢者のインフルエンザと腸内環境
今の時期気になっている方が多いインフルエンザなどの感染症予防に、腸内環境改善が有効であるとの報告もあります。
65歳以上の高齢者にビフィズス菌(B.longum)を20週間摂取してもらったところ、ビフィズス菌を摂取した群は摂取していない群と比較してインフルエンザの発症者が少なく、体内の自然免疫が高まったそうです。
(Biosci.Biotechnol.Biochem:74(5),939-945,2010)
インフルエンザ予防にはR-○だけぢゃないですね
今回は主に腸内細菌に着目しました
次回は免疫について掘り下げてまとめたいと思います
(さ)
<参考>
・森永乳業 ビフィズス菌研究所のホームページ
・体の中の下界 腸の不思議(著:上野川修一)