先日、以下のようなタイトルの興味深い論文を発見しました
「Preconception serum 1,1,1-trichloro-2,2,bis(p-chlorophenyl)ethane and B-vitamin status: independent and joint effects on women’s reproductive outcomes」
1,1,1-trichloro-2,2,bis(p-chlorophenyl)ethaneは農薬で使用されるDDTのことで、このジョンズホプキンス大学による研究では、女性の血清DDTとビタミンB群濃度と妊娠や流産の関係について調べられています
今回は、この研究内容について簡単にご紹介します
※原文を入手できなかったため試験の詳細は不明ですが、論文要旨をみるとこんな内容です
【目的】
1,1,1-トリクロロ-2,2,ビス(p-クロロフェニル)エタン(以下、DDT)またはビタミンB群欠乏はヒトの生殖に悪影響を及ぼすことが知られているが、両者が合わさった影響については全く知られていない。
そこで、ビタミンB群を補うことで、妊娠と早期流産に対するDDTの悪影響から守れるかを検討。
【被験者】
中国の安徽省出身の妊娠経験のない291人の女性
【方法】
血清ビタミンB群(ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12)濃度とDDT濃度によって女性をカテゴリー分けし、避妊をやめてから妊娠42週もしくは12か月までの期間調査。
早期流産の有無は尿ヒト絨毛性ゴナドトロピンを測定することで判断。
【結果】
291名の女性が385件妊娠したが、そのうちの31%が早期流産した。
ビタミンB群とDDTの影響については、DDTの血清濃度が高くても特にビタミンB12濃度が高ければ妊娠しやすく、また、葉酸濃度が高くなると流産しにくかった。
<論文要旨>
http://ajcn.nutrition.org/content/100/6/1470.abstract
ちなみに、独立行政法人 国立健康・栄養研究所のニュースサイトである「LINK de DIET 世界の最新健康・栄養ニュース」を見てみると、この論文の結果が以下のようにまとめられていました。
『DDTレベルが高く、ビタミンBレベルも十分にあった女性は、DDTレベルが低い女性よりも早期流産の可能性が42%高かった。しかし、DDTレベルが高くビタミンBが欠乏していた女性が妊娠6週前に流産する可能性は2倍であった。
研究チームがB-6・B-12・葉酸の3タイプのビタミン群を検討したところ、妊娠に関するリスクは、B-12と葉酸欠乏時や、複数のタイプのビタミンBが欠乏している際に高くなっていた。
また、DDTレベルが高くビタミンBレベルの低い女性は、妊娠を初めてするまでに約2倍長くかかることも明らかとなった。』
(引用元:LINK de DIET 世界の最新健康・栄養ニュース)
まとめると、「血清DDT濃度が高くても、ビタミンB群が十分に補われていれば妊娠しやすく流産しにくい」ということです
DDTは世界的にも使用が禁止・制限されており、現在の日本ではDDTを使用することはできません。
そのため、それほどDDTの影響を心配する必要はないかもしれませんが、DDTが使用されている国は存在するので、日本人女性であっても輸入食品などによってDDTを取り込んでしまう可能性は否定できません
最近、「2013年国民健康・栄養調査」の結果が公表されましたが、その結果、多くの世代でビタミンB群のうちビタミンB1とビタミンB2は推奨量を下回っているそうです
普通に食事をしていればビタミンB群のうち2種類のみが不足するということは考えにくいため、他のビタミンB群も十分に足りていない可能性が考えられます。
妊娠を希望される女性や妊婦さんはもちろんのこと、日本人の多くの方はビタミンB群を意識して摂取する必要がありますね
(さ)
<参考>
・米国臨床栄養学雑誌(http://ajcn.nutrition.org/)
・LINK de DIET 世界の最新健康・栄養ニュース