先日、論文検索をしていたところ「Duration and Timing of Sleep are Associated with Repetitive Negative Thinking(睡眠時間と睡眠のタイミングは、ネガティブな考えの繰り返しと関連する)」という内容の論文を発見しました
師走の今は忙しい時期なので、夜遅くまで仕事をする人が多いのではないでしょうか
そして、睡眠時間が短い人や夜寝るのが遅い人などは、ネガティブなことを繰り返し考えがちではないですか
今回は、この論文の内容を簡単にご紹介します
【目的】
心に繰り返し現れる煩わしく悲観的な考えがあると、人は繰り返しネガティブな考えをすると言われている。
こうした考えはコントロールできないと考えられ、ネガティブな人は将来について心配しすぎて物事を深く考えたり、不快な記憶や考えを日常で頻繁に思い出してしまい、それ以外のことが考えられなくなってしまいがち。
(全般性不安障害・大うつ病性障害・心的外傷後ストレス障害・強迫性障害・社会不安障害を患っている人に典型的なもの)
そして、こうした人は睡眠問題に悩む傾向がある。
そのため、まずは、特に十分に睡眠を取っていない人で「ネガティブな考えの繰り返しをすることと睡眠問題の関係」が見られるかどうかを調べ、その後、ネガティブな人の「ベッドに向かう時間とネガティブな繰り返しの思考に関連があるか」を検討。
【参加者】
ビンガムトン大学の100名の大学生(平均年齢19.4歳)
【方法】
アンケートと2種類のコンピュータでの作業を行うことで、学生が、どの程度ある物事について心配し、繰り返し考え、その考えに取り付かれているかということを測定し、ネガティブな思考を評価。
また学生は、朝型か夜型か、夕方に偏った睡眠覚醒スケジュールなのかどうかなどについても回答。
【結果】
睡眠時間が短い人や、ベッドに向かう時間が遅い人は、そうでない人に比べ繰り返しネガティブな考えをする傾向にあることが明らかとなった。
そして、この傾向は自分を夜型とする学生にも見られた。
<参照論文>
http://link.springer.com/article/10.1007/s10608-014-9651-7
ネガティブな考えの原因は睡眠不足や遅い就寝だけではありませんが、やはり、睡眠とマイナス思考は少なからず関係がありそうです
心身ともに健康的に過ごすためには、早めに就寝し、十分な睡眠時間を確保するのがお勧めです
ちなみに、睡眠に関係の深い栄養素には「トリプトファン」や「ビタミンB6」の他に「鉄」などが挙げられます
トリプトファンはアミノ酸ですが、睡眠ホルモンであるメラトニンを体内でつくる時に欠かせないセロトニンの材料になります
このトリプトファンからセロトニンを合成するために、ビタミンB6と鉄が必要です。
<トリプトファンからのメラトニン合成経路図>
また、トリプトファンを効率的に脳内に取り込むためには糖質も必要です。
実は、摂取したアミノ酸はお互いに脳内へ取り込まれる時に競合してしまいます。
しかし、糖質の摂取によって膵臓からインスリンが分泌されると、トリプトファンの脳内への取り込みを邪魔してしまう他のアミノ酸の骨格筋へ取り込みがアップします。
インスリンはトリプトファンの取り込みにはほとんど影響しないため、相対的に血中のトリプトファン濃度が上がり、脳内にトリプトファンが取り込まれやすくなるのです
最近、夜に炭水化物を抜く人が増えていますが、寝つきが悪い場合には少しは炭水化物を摂った方が良いかもしれませんね
※しかし、糖質の摂りすぎは体の糖化につながってしまうため、就寝前に糖質をたくさん摂ることには注意が必要です
以下、トリプトファンとビタミンB6、鉄が多く含まれる食品例をご紹介します。
参考にしてみてください
●トリプトファンが多く含まれる食材
肉類、赤身の魚、乳製品、大豆製品 など
●ビタミンB6が多く含まれる食材
肉類、赤身の魚、豆類、ニンニク など
●鉄が多く含まれる食材
レバー、肉類、赤身の魚、ひじき、緑黄色野菜 など
(さ)
<参考>
・国立健康・栄養研究所のホームページ
・独立行政法人 農畜産業振興機構のホームページ
・甲南大学のホームページ(http://www.konan-u.ac.jp/special/vol_5.html)
・イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版
・日本食品標準成分表 2010
・一目でわかる 医科生化学 西沢和久 訳
・「いい睡眠があなたを10歳若くする」青木晃 著