最近のブログでは、遺伝子関連の難しい話が続いていますね
難しいついでに、今回は最近話題になっている「エピジェネティクスと栄養」について簡単にご紹介します
●エピジェネティクスとは?
エピジェネティクスとは、DNAの塩基配列変化を伴わない遺伝子発現を調節するシステムを解明する学問のことです
例えば、私たちの体を構成している約60兆個の細胞はどの細胞も基本的には同じDNAを持つにも関わらず、DNAの塩基配列の変化以外の要因で皮膚や内臓、骨などの異なる細胞に分化します。
この細胞の分化に関わるのが遺伝子のエピジェネティックな変化です。
このような調節システムは食事や大気汚染、喫煙、ストレスなど様々な影響を受けるため、老化や病気にも関わっていると考えられています
また、妊婦さんが栄養不良の場合は、胎児の遺伝子にエピジェネティックな変化が起き、子供の成長後の2型糖尿病、脂質異常、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病の原因となるだけでなく、子孫にまで受け継がれてしまうことが明らかとなっています
●エピジェネティクスに関わる栄養素
エピジェネティクスでは、DNAのメチル化が良く研究されています
※DNAのメチル化とは、その多くがシトシンとグアニンの結合(CpG配列)が連続している部分のシトシン塩基にメチル基(-CH3)が付くことを指します。
DNAのメチル化は、遺伝子発現の抑制に関わるエピジェネティックな目印で細胞分裂をしても受け継がれるため、分化した細胞は生物の一生にわたって皮膚は皮膚、骨は骨の細胞としてあり続けます
このメチル化に関わるメチル基は主に葉酸(5-メチルテトラヒドロ葉酸)由来で、メチル基の受け渡しで働く酵素にはビタミンB12が補酵素として働きます。
そのため、葉酸とビタミンB12が不足するとDNAのメチル化が不十分となり、遺伝子発現が異常となってしまいます
<メチル基転移の流れ>
※葉酸はレバーや緑黄色野菜、ビタミンB12は肉や魚などの動物性食品に豊富に含まれています。
葉酸は、胎児の神経管閉鎖障害を防ぐために妊娠前~妊娠初期に重要と言われる栄養素ですが、エピジェネティックな観点では妊娠前から妊娠中、授乳中にも不足なく補う必要があります
※ただし、葉酸は摂りすぎには注意が必要なので、サプリメントとして摂取する場合には1日900~1,000μgを超えないように気を付けましょう
(さ)
<参考>
・イラストレイテッド ハーパー・生化学
・遺伝子医学 MOOK25 エピジェネティクスと病気
・独立行政法人 国立がん研究センターのホームページ
・東京大学大学院 獣医学専攻 細胞生物科学教室のホームページ