最近ではマイクロRNA(miRNA)と呼ばれるRNAの働きが注目され始めています
「メッセンジャーRNA(mRNA)なら知っているけど、miRNAとは何?」と思われる方も多いかもしれません。そこで今回は、miRNAの概要をご説明します
目次
マイクロRNA(miRNA)とは?
現在は遺伝子の研究が進み、ヒトやマウスなどのDNAが解読されており、ヒトとマウスで共通する遺伝子は全体の99%にのぼり、病気に関わる遺伝子だけ見ても90%が共通していることがわかっています🐭
遺伝子がそれほど共通する部分が多いのに、ヒトとマウスでは姿かたちが全く異なるのは何故でしょうか?
前回のブログ「遺伝子について知っていますか?」の最後の部分で、遺伝子情報の中でタンパク質をコードしている部分は2~3%しかなく、他の97~98%の部分はよく分かっていないことをご紹介しました。
このよく分かっていないDNAの97~98%に存在するmiRNA情報が、ヒトとマウスを分けるカギとなるのではないかと考えられ始め、最近、miRNAは発生や形態形成のプロセスの中で細胞内の遺伝子発現に対してブレーキをかけるために存在しているということが分かってきました。
典型的なmiRNAは18~25塩基という小さな一本鎖のRNAで、hnRNAやmRNAのようにタンパク質をコードしていないためノンコーディングRNAに分類されています。
ヒトで見つかっているmiRNAは2,400種類を超えており、細胞や器官・臓器の分化だけでなく細胞のがん化にも深くかかわっていることが予想され、研究が進められています。
マイクロRNA(miRNA)のつくられ方と働き
miRNAは小さな1本鎖RNAですが、最初から小さな分子としてつくられるわけではなく、いくつかのプロセスを経て小さくなっていきます。
1.イントロンやDNAから作られる
DNAからhnRNAに遺伝情報が転写された後、スプライシングによってイントロンが外れてエクソンのみ残ってmRNAとなりますが、外れたイントロンの中にmiRNAとなるものがあります。
また、DNAから直接miRNAが転写される場合があります。
2.pri-miRNAからpre-miRNAへ
イントロンからできたmiRNAもDNAからできたmiRNAも数百~数千塩基の長さを持つRNAで、完全系のmiRNAではないためpri-miRNAと呼ばれます。
そして、そのpri-miRNAは酵素(Drosha)によって60~75塩基程度の長さのヘアピン状のpre-miRNAとなり、核の外へ出ていきます。
3.pre-miRNAからmiRNAへ
核の外へ出たpre-miRNAは次の酵素(Dicer)によってさらに短くなり、最終的に18~25塩基の短い1本鎖のmiRNAが完成します。
完成したmiRNAは、相補的な塩基配列を持つmRNAに結合してタンパク質への翻訳を停止させたり、mRNAを分解することでタンパク質の生成を抑制します。
miRNAと病気
このように、miRNAは人が生きる上で必要不可欠なタンパク質の生成を調節しているためmiRNAが正常に機能しなくなると病気につながることが容易に想像できます。
実際に、固形がん(乳がん、胃がん、大腸がん、膵臓がん、前立腺がん)では正常な組織と比べてmiRNAの発現状態が異なっているようです
また、アルツハイマーやインスリン分泌、心臓の繊維化、C型肝炎ウイルスなどに関係するmiRNAも見つかってきているそうです。
miRNAは、細胞の中だけでなく血清や尿、唾液、母乳中にも存在していることが分かっています。
今後、採血しないで唾液や尿などから病気の診断ができる日が来るかもしれません😀
次回は、臨床の現場でmiRNAをどのように役立たせることができるのか、また、食品成分によるmiRNA制御などについてまとめたいと思います
マイクロRNA(miRNA)の関連記事
(さ)
昭和大学薬学雑誌 第4巻 第1号(薬・異物や生体内化合物の代謝を制御するmicroRNA)
札幌医科大学のホームページ
東京医科歯科大学のホームページ
Proc Natl Acad Sci USA 103,2257-61