前回、副腎疲労(アドレナル・ファティーグ)についてまとめました
この中で「低血糖」という言葉が出てきたのですが、この低血糖は「低血糖症」による症状で、糖尿病などで起こる「低血糖」の状態とは異なると言われています
そこで今回は、「低血糖と低血糖症」について簡単にまとめます
●低血糖とは
低血糖とは、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が低くなった状態です。
血糖値は下がりすぎると命に関わることがあるため、ホルモンによって厳密に調節されており、健常人では空腹時でも 70mg/dL より低下することはほとんどありません
しかし、糖尿病患者さんのインスリン(薬剤)過多や、インスリノーマ(膵臓のランゲルハンス島でインスリンを産生するβ細胞の腫瘍化)などの特殊な病態や空腹状態での飲酒、薬剤(不整脈用剤など)で低血糖になることがあります。
もし血糖値が60‐70mg/dL未満になると、「冷や汗がでる、急に強い空腹感をおぼえる、動悸がする、手足が震える、ふらつく、頭痛」などの低血糖症状が出現しますが、これは低血糖に対して血糖を上昇する働きのあるホルモン(アドレナリンやグルカゴン、コルチゾール)が分泌されるために生じる症状で「交感神経症状」と呼ばれます。
さらに血糖値が30mg/dL未満になると、「うとうとしている、いつもと人柄の違ったような異常な行動をとる、わけのわからないことを言う、ろれつが回らない、意識がなくなる、けいれんを起こす」などの症状が出現し、これは脳の機能が低下するために生じる症状で「中枢神経症状」と呼ばれます。
低血糖になっても直ちに治療を行えば危険はありませんが、中枢神経症状が数時間以上続くと、稀に脳に重大な後遺症が残ったり命が危険にさらされることがあります
●低血糖症とは
低血糖症とは、血糖値が低くなる症状ではなく、血糖のコントロールが不良になり血糖値を適切な状態に維持できない病気です。
原因は、甘い物の食べ過ぎ(食原性)や副腎疲労、甲状腺機能障害など(機能性)によるものがあります。
【食原性低血糖症】
甘い物を食べ過ぎると血糖値が急上昇しますが、血糖値が急上昇すると、すい臓から血糖値を下げるインスリンというホルモンが過剰に分泌され、血糖値が急降下します。
血糖値が下がると、うつ症状、元気が出ない、眠気に襲われるなどの症状が出て、血糖値を上げようと無性に甘いものが食べたくなります
また、体の中では血糖値を上げるホルモンが分泌され、血糖値を上昇させようとしますが、血糖値を上昇させるホルモンは血糖値上昇以外の作用も持っており、血圧の上昇や心拍数の上昇、体温の上昇や発汗、緊張感や不安感を引き起こすため、イライラしたり怒りっぽくなったり、急に不安になったりします
もし、甘いものが食べたくなって本能のままに食べてしまうと、血糖値が上昇するので一時的には気持ちが安定しますが、インスリン分泌による血糖値の急降下が起こり、同じことを繰り返すため気分が安定しません
お菓子や菓子パンなどを主食にしたり、朝食を抜いている、食後のデザートが欠かせない、缶コーヒーや清涼飲料水を頻繁に飲むなど食生活が乱れている方、食後は無性に眠たくなったり、お腹がすいているはずはないのに甘いものが食べたくなる方などは要注意です
心当たりのある方は、まず、甘い食べ物、飲み物を避けて食生活を正すことから始めてみましょう
間食したい場合には、血糖値を上昇させにくい豆類やナッツがお勧めです
【機能性低血糖症】
副腎や甲状腺からは血糖値を上昇させるホルモンが分泌されますが、これらの臓器の機能が低下すると血糖値の調節が上手くいかなくなってしまいます
特に、現代人はストレスフルなので副腎が疲労しがちです
副腎疲労の状態では、十分な量のコルチゾールが出ないために低血糖に陥っていることが多く、甘い物への欲求が猛烈に強くなることがあります
こちらも、欲求のままに甘いものを食べると血糖値の乱高下を招き、体(臓器)へ大きな負担を掛けてしまうため、血糖値を上げにくい食事が必要です
また、副腎疲労空の回復には休息が欠かせないため、ストレスを回避して十分に体と心を休める必要があります
糖尿病対策として甘い食べ物に注意されている方は多くいらっしゃいますが、低血糖症対策として甘い食べ物を避けている方はまだまだ少ないかもしれないですね。
最近「キレやすい」人や「やる気や集中力のない」子どもや大人が問題視されていますが、もしかすると低血糖症が原因となっている場合もあるかもしれないですね
食事やおやつには、甘いお菓子やスナック菓子、菓子パン、エナジードリンク、清涼飲料水などは避けたいものです
※低血糖症は、今の日本では正式な疾患名として認められていないため、治療は保険適用外であったり、栄養学について経験の少ない医療機関では、パニック障害、うつ、統合失調症などと誤診されてしまう可能性があるようです。
もし自分が「低血糖症かな?」と感じて医療機関を受診する場合、栄養学に詳しい医療機関がお勧めです。
(さ)
<参考>
・厚生労働省のホームページ
・日本病院薬剤師会のホームページ
・宮沢医院 副腎疲労外来(http://rootcause.jp/afs/)