最近では、日本人の多くの方の副腎が疲労しており、様々な不調の原因になっていると言われています。
しかし、医学界ではその認識度が低いために見過ごされがちです。
そこで今回は「副腎疲労(アドレナル・ファティーグ)」について簡単にご紹介します
目次
副腎疲労(アドレナル・ファティーグ)とは
副腎(アドレナル)は、小さな三角形をした形の臓器で腎臓の上にちょこんと乗っているため副腎という名前がついていますが、腎臓とは直接つながっているわけではありません。
ステロイドホルモン(アドレナリン、コルチゾール、性ホルモンなど)を分泌する内分泌器官のひとつで、栄養素の代謝、水分・電解質の平衡、循環器系、性欲などのバランスを保っています。
副腎の模式図
もし、副腎の機能が低下するとステロイドホルモンの分泌量が減少してしまいます。
ステロイドホルモンの量が減少すると、様々な体の働きに影響が出てしまうため「疲労(ファティーグ)」を中心として低血糖、うつ、性機能低下などの症状が起きると言われています。
このように副腎の機能が低下した状態を「アドレナル・ファティーグ」と呼び、非アジソン病副腎機能低下、副腎無気力症、副腎疲労症候群など多くの名前で知られています。
副腎疲労の原因
アドレナル・ファティーグは「ストレス」が原因となって起こります。
ストレスには身体的なものから心理的なもの、感染症、環境由来のものなど様々ですが、ストレス源が何であれ全ての種類のストレスに副腎は反応します。
例えば、最愛の人の死、離婚、大きなけがや病気、失業などは大きな負のストレスですが、結婚、妊娠、個人的な成功、長期休暇などの嬉しいと思える変化であっても体はストレスを感じます
この他、質の悪い食生活や不規則な生活習慣、激しい運動もストレス源ですが、ストレスが重なるほど副腎の機能は悪化しやすくなってしまいます。
ストレスを耐える能力には個人差があるため、同じストレスでもアドレナル・ファティーグの発症と罹患期間は人によって大きく異なりますが、「十分な休息をとらない人」「人生を楽しまない人」「完璧主義な人」「重篤な外傷や再発を繰り返す病気をした人」などは、誰でもアドレナル・ファティーグの危険があります。
副腎疲労の見極め方
副腎が疲労しているかどうか知るためには、副腎が出しているホルモン(コルチゾールやDHEA-S、アドレナリンなど)を調べる方法があります。
ホルモン量は血液検査だけでは正確に分からないため、細胞内のホルモン濃度をより良く測定できる唾液検査を行って判断します
また、この他に「縮瞳テスト(眼に光を当てた時の縮瞳時間の測定)」や「血圧測定(起立性低血圧はアドレナル・ファティーグの兆候であることが多い)」などの方法もあります。
副腎疲労の対策
アドレナルファティーグへの対策は以下の通りです。
ストレスへの対処
ストレス源となっている物事や人、環境への対策には
①状況を変える
②状況に合わせて自分を変える
③状況から離れる
などがありますが、どれも簡単なことではありません。
そのため、ストレスに対してどのように対処するかを決定し、行動することが大切です。
食事の改善
アドレナル・ファティーグの方は、十分な量のコルチゾールが出ないために低血糖に陥っていることが多く、甘い物への欲求が猛烈に強くなることがあります。
欲求のままに甘いものを食べると血糖値の大きな変動を招き体へ大きな負担を掛けてしまうため、血糖値を上げにくい食事が必要です。
<血糖値を上げにくい食事の例>
・血糖値を上昇させにくい「低GI※食品」の活用
・懐石料理のような食べ方(副菜⇒主菜⇒主食)
・精製された白い食品(白米、精白小麦粉、上白糖など)を減らす
など
※グァーガムや難消化性デキストリンなどの食物繊維を食前に摂取することでも血糖値の急激な上昇を防ぐことができます。
栄養素の補給
副腎を疲労させてしまうカフェインを多く含むコーヒーやチョコレーの他、トランス脂肪酸や酸化している脂肪酸を多く含む油脂を避けるとともに、不足しがちなオメガ3系脂肪酸(EPA、DHA、α-リノレン酸など)の補給がお勧めです♪
また、副腎が疲労すると体内のビタミンCやビタミンB群が減り、カルシウムやマグネシウム、亜鉛などのミネラルも不足しがちになるため、十分なビタミン、ミネラルを補給することが大切です
その他
運動、ホルモン補充、デトックスなども有効だと言われていますが、やはり休養が欠かせません。
眠ることによって副腎が快方に向かうため、十分な休息を心掛けることが何よりも重要です。
最近では、朝食にスムージーを飲む方も多くいらっしゃいます。
しかし、アドレナルファティーグの方が朝にスムージーを摂取すると、含まれる豊富なカリウムによって血圧が上がらずに気分が悪くなったり元気が出ないこともあるため、朝は塩分を含む食べ物(味噌汁や漬物など)がお勧めです。
やはり日本人の朝は、昔ながらの和食が良いですね。
副腎疲労からの回復には時間がかかることが多いため、焦らず慌てず諦めずにじっくりと取り組みましょう。
(さ)
・若くて疲れ知らずの人は副腎が元気(上符正志:著)
・しつこい疲れは副腎疲労が原因だった(本間良子:著)
・宮沢医院 副腎疲労外来