糖尿病で問題と言われるのは糖尿病性網膜症、糖尿病性腎障害、糖尿病性神経障害の3大合併症ですが、近年、糖尿病性骨粗鬆症も問題視されるようになってきています
皆さんは糖尿病性骨粗鬆症をご存知でしょうか
今回は、糖尿病性骨粗鬆症について簡単にまとめたいと思います
●糖尿病性骨粗鬆症とは
骨粗鬆症とは、骨の量が減ってしまったり骨がもろくなることで、わずかな衝撃でも骨折をしやすくなる病気です
加齢に伴って誰でも骨は弱くなっていきますが、糖尿病の人ではそのスピードが早く、糖尿病でない人の2~4倍も骨折しやすいと言われ、この糖尿病が原因で起こる骨粗鬆症を糖尿病性骨粗鬆症と呼びます
また、糖尿病性骨粗鬆症は一般的な骨粗鬆症とは異なり、骨密度や骨量が低くなること以外に骨の質が低下することが特徴的で、骨密度や骨量が十分でも骨折しやすいと言われています
●原因は?
糖尿病によって骨粗鬆症が起きやすい原因は、大きく以下の3点が考えられます
コラーゲンの質の低下
骨はカルシウムでできていると思われている方も多いですが、実はタンパク質も含まれており、骨のタンパク質のうち約90%がⅠ型コラーゲンです
骨はコラーゲンの繊維にカルシウムやマグネシウムなどのミネラルが付着した構造をしており、建物に例えるとコラーゲンが鉄筋でカルシウムなどのミネラルはコンクリートと当てはめることができます
通常、骨のコラーゲンはコラーゲン架橋(生理的架橋)と呼ばれる構造を形成して、コラーゲン線維の強度をアップさせていますが、
こんな感じ
糖化や酸化などによってコラーゲンに無秩序な架橋(非生理的架橋)が形成すると、骨のしなやかさが失われてしまい骨の強度が低下します
このように、糖尿病で高血糖による糖化や、ストレスを受けることで酸化が起こってしまうと、コラーゲンの質が低下してしまうため、ミネラル不足に関わらず骨粗鬆症になりやすくなってしまいます
今まで、骨粗鬆症と言えばカルシウムやマグネシウム、ビタミンDの補給が一般的でコンクリート部分が注目されていましたが、現在は、鉄筋(コラーゲン)の状態を診ることも大切だと考えられており、骨粗鬆症の検査では、骨密度測定だけでなく体の糖化(ペントシジン:AGEs)の測定もされ始めています
インスリン作用の低下
骨を作る骨芽細胞にはインスリンと結合するためのレセプター(受容体)があり、インスリンには骨芽細胞を増やす働きがあります
しかし、糖尿病でインスリンの作用が低下すると、骨芽細胞のレセプターがインスリンと反応しにくくなり、骨芽細胞の増殖が抑えられて骨が作られず、骨量が減少してしまいます
糖質コルチコイドの分泌量増加
糖質コルチコイドは主に副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンで、肝臓における糖新生を促進させ、副腎皮質以外に脂肪組織からも分泌されています
インスリンの働きを抑えてしまう作用があり、肝臓以外の組織における糖(グルコース)の利用を低下させるため、肥満(脂肪蓄積)を伴う2型糖尿病の場合には糖質コルチコイドの分泌量が多くインスリンが効きにくい(インスリン抵抗性)場合が多くあります
また、糖質コルチコイドの分泌が増加すると、骨を作る骨芽細胞よりも脂肪細胞ができやすくなったり、骨を壊す骨芽細胞の増加によって骨が減りやすくなってしまうことが分かっています
糖尿病って本当に怖いですね
糖尿病は生活習慣病です。
糖尿病対策は、バランスのとれた食事、適度な運動、十分な休養(睡眠)です
自分のできることから少しずつ食生活や生活習慣を改善していきたいですね
特に、ご飯やパンなどの炭水化物や、お菓子、ジュースなどの糖質の摂り過ぎには気を付けましょう
(さ)
<参考>
・独立行政法人 国立病院機構のホームページ
・九州大学 私学研究院 歯学府 歯学部のホームページ
・イラストレイテッド ハーパー・生化学[原書29版]
・https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsci/34/3/34_3_138/_pdf
・骨と骨代謝 2008 Vol.21 No.4 「骨の材質を反映するマーカーの骨折危険性評価への応用と課題 」斉藤充先生
・アークレイ株式会社のホームページ