前回、放射線に関する言葉についてまとめました。
放射線と放射性物質と放射能
今回は、気にする方も多い放射線と健康被害についてまとめたいと思います
●放射線で気をつけること
前回のブログでも書いたとおり、放射線(放射性物質)は身近にあるもので呼吸や食事でも普通に体内に入ってきます
放射線の問題は「有るか無いか」ではなく、その「量や強さ、浴びる範囲」などです
例えば、500ミリシーベルトの放射線を一度に勢い良く全身にあびると、白血球が減少します
しかし、1ミリシーベルトの放射線を500日かけて浴びる場合には白血球は減少しません
身近なものでは、食塩(塩化ナトリウム)を一度に200g摂取すると50%の確率で死亡しますが、1日10gの食塩を20日かけて200g摂取しても死亡することはありません(日本人の1日の食塩の摂取量は約10g)
放射線も食塩も、積算量では体に悪影響が出る量でも、少ない量を時間をかけてあびる(取り入れる)と病的な影響はほとんどないと考えられています
範囲については、あびる放射線の程度が同じでも、それが部分的(局所被ばく)なのか体全体(全身被ばく)なのかで影響が異なります。
火傷の場合のように、火傷を負った(放射線をあびた)面積が重要で面積が広いほど危険です
●放射線によるダメージ
私たちの体は約60兆個の細胞でできていると言われていますが、放射線をあびると細胞の遺伝子を傷つけてしまいます
遺伝子に傷がついても、通常は体に修復機能があるため自然に修復されます
しかし、傷つける要因が多かったり大きかったりする場合や、修復機能が間に合わない・間違った修復が行われるなどの場合に、細胞が死んでしまったり、がん化が起こったりします
放射線をあびない場合でも、細胞は日々死んだり、がん化が起きていますが、やはり一定量以上の放射線被ばくは細胞死やがん化のリスクが高くなります
※インドのある地域では、屋外の天然被ばくが年間70ミリシーベルトまで達する所がありますが、そうした地域でも調査の結果がん患者は増えておらず、100ミリシーベルト以下の被ばく線量では人体に明らかな影響があるとは言えないようです。
●遺伝子を傷つける要因
遺伝子を傷つける要因は放射線以外にも様々なものがあり、その要因の影響を放射線被ばくの単位に合わせると以下のとおりです
・野菜嫌いの人は150~200ミリシーベルト
・喫煙や毎日3合以上の飲酒は2000ミリシーベルト
(アルコールを体内で分解する際に作られるアセトアルデヒドは発がん物質)
・受動喫煙(女性の場合)は約100ミリシーベルト
・肥満や運動不足、塩分の取りすぎは200~500ミリシーベルト
確かに、放射線(放射性物質)をあびたり体内に取り入れることは、体へ悪影響を及ぼすリスクがあるため、避けるにこしたことはありません
しかし、目に見えず避けるには限界のある放射線を気にする以外に、避けることのできる身近なことに対処して、細胞(遺伝子)を傷つけないようにすることも大切です
野菜を積極的に食べたり、禁煙、適度なアルコール、運動、減塩などを心掛けましょう
次回は放射線対策についてまとめたいと思います
(さ)
<参考>
・独立行政法人 国立がん研究センターがん予防・検診研究センター 予防研究グループ のホームページ
・東京都健康安全研究センターのホームページ
・中野区のホームページ(http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/402000/d013701.html)
・子供たちを守るためのいちばんわかりやすい放射線対策の本(青木晃:監修、竹澤瑞穂:聞き手)
・放射線のひみつ(中川恵一:著)