お問い合わせで、妊婦さんの葉酸摂取についてご質問をいただくことがあります
葉酸には胎児の神経管閉鎖障害のリスクを下げる効果が期待できるため、厚生労働省は妊娠を計画している女性や妊娠の可能性がある女性などは、食事からの葉酸にプラスして栄養補助食品などで葉酸を補うことを勧めています。
栄養素は食事から補うことが基本ですが、なぜ厚生労働省は葉酸に限っては栄養補助食品などで補うことを勧めているのでしょうか
そこで今回は、葉酸摂取について簡単にご紹介します
◆葉酸とは
葉酸は、ホウレンソウの抽出物から発見されたビタミンB群の一種で、緑黄色野菜に多く含まれており、動物性食品のレバーにも豊富です
体内で栄養素の代謝や、遺伝子(DNA)の成分である核酸が作られるとき、すなわち細胞の生まれ変わりに必要です
葉酸の別名はプテロイルグルタミン酸と呼ばれ、葉酸というと、基本的には構造中にグルタミン酸が1つのプテロイルモノグルタミン酸を指します。
<プテロイルモノグルタミン酸の構造>
◆葉酸の吸収や働き
食品中の葉酸はグルタミン酸が多数結合したポリグルタミン酸型で存在していますが、食品の調理や加工、胃酸などによって食品から離れ、小腸粘膜にある酵素によってモノグルタミン酸型葉酸に分解されてから小腸細胞内へ吸収され、小腸膜上皮細胞内で酵素によって5-メチルテトラヒドロ葉酸(MeTHF)に変換されます
その後、MeTHFは肝臓に運ばれて酵素の働きでポリグルタミン酸型となり、ポリグルタミン酸型で全身の約50%の葉酸が肝臓に蓄積されます
<葉酸の体内動態>
葉酸は、食事からの摂取不足や腸からの吸収不良、妊娠時、ある種の薬剤摂取、血液透析、アルコール中毒などの場合に欠乏症が起こることがあります
特に妊娠時は胎児の成長に関わるため、厚生労働省が定める日本人の食事摂取基準[2010年版]ではプテロイルモノグルタミン酸の形でプラス400μg摂取することを勧めています
葉酸はモノグルタミン酸型で体内に吸収されるため、ポリグルタミン酸型の葉酸の体内での利用率は50%程度と考えられています
天然食品中の葉酸はそのほとんどがポリグルタミン酸型の葉酸なので、食品や100%天然由来の栄養補助食品などで葉酸をプラスする場合には800μg摂取しないと400μgプラスしたことになりません
(800μgの50%は400μgです)
以上より、食品から十分なモノグルタミン酸型の葉酸を摂取することは難しいため、栄養補助食品(天然原料ではなく合成原料を用いたもの)からモノグルタミン酸型の葉酸を摂取することが勧められているようです
葉酸に限っては天然だから良いとは限らないかもしれないですね
(さ)
<参考>
・日本人の食事摂取基準[2010年版]
・国立健康・栄養研究所のホームページ