以前、ブログでロコモティブシンドローム(ロコモ:運動器症候群)について取り上げたことがあります。
ロコモとは、加齢に伴う筋力の低下や関節や脊椎の病気、骨粗しょう症などにより運動器の機能が衰えて要介護や寝たきりになってしまったり、そのリスクの高い状態を表す言葉です
高齢化が進んでいる今、ロコモに注目が集まっていますが、最近ロコモになる前の段階を「フレイル」と呼ぶことが決定しました
そこで今回はフレイルについて簡単にご紹介いたします
●フレイルについて
日本においてこれから人口増加が見込まれる後期高齢者(75 歳以上)の多くは、“Frailty”という中間的な段階を経て、徐々に要介護状態に陥ると考えられています。
Frailtyとは、高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに弱くなり、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態のことです。
また、筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題(サルコペニア)のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念でもあります。
今までのFrailtyの日本語訳は「虚弱」の他に「老衰」、「衰弱」、「脆弱」などが使われることがあり、“加齢に伴って不可逆的に老い衰えた状態”のような印象がありますが、Frailtyには、しかるべき介入により再び健常な状態に戻るという可逆性が含まれているため、Frailtyに陥った高齢者を早期に発見して適切な介入をすることにより、生活機能の維持・向上を図ることが期待できます。
また、「虚弱」では Frailty の持つ身体的、精神・心理的、社会的側面などの多面的な要素のニュアンスを十分に表現できないため、日本老年医学会はFrailtyを「虚弱」と表現することに代わって「フレイル」を使用すると決定しました
●フレイルの予防
フレイルの予防や発症を遅らせるには、食事や運動に気を付ける必要があります。
<食事>
エネルギーやタンパク質の摂取量の低下がフレイルに関わっているとの報告があるため、低栄養の改善はフレイルの予防や発症を遅らせるためにとても重要です。
また、血中のカロテノイド、ビタミンE、ビタミンDの濃度が将来のフレイルティに関わっているとの報告もあるようです。
この他、不足しがちな必須脂肪酸であるオメガ3系脂肪酸や、様々な疾患発症との関連が報告されているホモシステインを減らすために役立つ葉酸やビタミンB6、ビタミンB12なども補うのがお勧めです
日本人は、年々摂取エネルギーやタンパク質が少なくなっているだけでなく、加工食品の利用増加によりビタミン、ミネラル、必須脂肪酸も不足しがちです
こういった栄養素を普段から十分に補う必要がります
<運動>
定期的な運動が有効だと言われています
具体的には太腿前の大腿四頭筋・お尻の大臀筋・腹筋群・背筋群などの筋肉を鍛えるような運動を継続的に行うことが大切で、それ以外にも日常から活動的な生活を送ることが大切です
栄養補給や運動をそれぞれを単独で行うよりも、合わせて取り入れることでより効果が期待できるそうです
また、口腔ケアを取り入れることで誤嚥性肺炎や口腔内の乾燥を予防し、全身の健康を保持増進することが期待できます
特に現代の女性はダイエット志向が強く将来が危ぶまれるため、「しっかり食べてよく体を動かす」ことを心掛けた方が良いかもしれないですね
(さ)
<参考>
・日本老年医学会のホームページ
・「フレイルティ&サルコペニアと介護予防」(京府医大誌 121(10),535~547,2012.)
・厚生労働省のホームページ