前回は食中毒菌の中の「ノロウイルス」についてまとめました。
今回は、数ある腸管出血性大腸菌の中で代表的な「O-175」について簡単にまとめたいと思います
●腸管出血性大腸菌O-157とは
主に牛の腸管に生息し、牛の糞便によって汚染された食肉やその加工品・井戸水などによって感染します
大腸菌は、菌の表面にあるO抗原(細胞壁由来)とH抗原(べん毛由来)により細かく分類されています。
「O157」とはO抗原 として157番目に発見されたものを持つという意味で、さらに細かく分類すると、「ベロ毒素」を産生して溶血性尿毒症症候群(HUS)などの重篤な症状を起こすものは、H抗原がH7(O157:H7)とH-(マイナス)のもの(O157:H-)の2種類です。
◆特徴
・菌は強い酸抵抗性を示し、胃酸の中でも生残する
・50個程度の菌でも発症してしまうほど感染力が強い
・強力な作用を持つ「ベロ毒素」によって大腸の血管壁が破壊され、鮮血混じりの血便が出る
◆潜伏期間
2~9日(多くは2~5日)
◆主な症状
軽度の発熱、激し腹痛、水溶性の下痢、血便、吐き気、嘔吐など
※初期症状が風邪に似ているため、見過ごしやすいので手遅れに要注意
※特に抵抗力の弱いお年寄りや子供が感染すると、「溶血性尿毒症症候群(HUS)」や脳症などの重症な合併症が発症を起こし、時には死に至る場合もある。
◆抵抗手段
・肉、魚、野菜などの生鮮食品は新鮮な物を購入し、冷蔵や冷凍の必要な食品は、持ち帰ったらすぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れる
・調理や食事の前には十分な手洗いをする(ヒトからヒトへの二次感染は糞口感染のため)
・食品の加熱処理をする(特に肉類は十分に加熱調理し、生肉は食べない)
→加熱時間の目安は、中心温度が75℃で1分以上[野菜の場合は、湯がき(100℃の湯で5秒間程度)が有効]
・井戸水の定期的な水質検査
腸管出血性大腸菌は3類感染症であり、「診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出なければならない。」と決められています。
3類感染症はこの他に、細菌性赤痢やコレラ、腸チフス、パラチフスがあり、危険性はそこまで高くはありませんが集団発生を起こしやすい感染症です。
発生時期は夏が多いようですが冬場に発生しないわけではないようですので、調理に携わる人はもちろんですが、食事をする方も食前の手洗いをしっかり行うなど食中毒のリスクを下げるようにしたいですね
次回は、私たちの身近によくいる「黄色ブドウ球菌」についてまとめたいと思います
(さ)
<参照>
・厚生労働省のホームページ
・国立感染症研究所のホームページ
・東京都感染症情報センターのホームページ