④剤形:スティック
「製造工程の概要」にて、おおまかな説明をしましたが、その中の「成型工程」について、今回は「スティック」の製造工程をご紹介します。
はじめに
スティックへ充填する内容物は基本的に顆粒となるため、タブレット成型の時と同様に、最初の工程で「造粒(※)」を行います。ここでは顆粒における造粒の目的について紹介します。
※造粒とは、粉を大きくして粒を造る工程です。フワフワと舞ってしまうような細かな粉を適度なサイズにすることで、その後の製造工程がスムーズになります。
造粒の目的
①流動性の向上、②粉末飛散防止、③付着の防止、④溶解性の向上
この4点のうち①~③は製造ラインでスムーズに作業を行っていくために、非常に重要なポイントとなります。
(④は食べた人に対する効果となります。造粒は粉末スティックの製造にも必要となる工程ですが、直接、口腔内へ粉を流す、もしくは水に溶かす場合を想像すると④の必要性が理解できると思います)
①流動性の向上・③付着の防止について
粉は一般的に、「細かいほど付着力が大きくなる」性質があります。これは比表面積(※)の考え方に則っています。
※比表面積:「単位重量あたりの表面積」もしくは「単位体積あたりの表面積」のことで、一般的に粉が小さくなるほど比表面積は大きくなります。nm(ナノメートル)クラスの微粒子・超微粒子と呼ばれるものは、比表面積が大きく付着力も非常に大きくなります。
付着力の大きい粉を機械に投入すると、スロープ(粉の流れるところ)・ホッパー(粉を溜めて安定的に落とすところ)で粉詰まりが発生し作業性が悪くなります。逆に言うと「粉を大きくする=付着力が小さくなる≒粉詰まりを低減できる」ということになります。
粉を造粒することで、見かけ上は粒の大きさが大きくなり、扱いやすくなります。粉という物性の奥深いところと言えます。
②粉末飛散防止について
粉は自重(粉自身の重さ)が軽いため、ホッパーからスティックへ粉を落とした時に舞い上がってしまいます。
舞い上がった粉は、スティックの口をシールする(圧着して封をする)際に、シール部分に噛み込まれてしまい、シール不良(そこに穴が開いた状態になるためバリアー性がなくなり、品質が悪くなる)、粉漏れの原因となります。
そのため、造粒により自重を重くして、粉舞いや噛みこみを予防します。
④溶解性の向上について
造粒によって生じる表面積とは、「外に接する部分(機械などに触れる部分)」だけではなく、バインダーにより結着した粉同士の空間が適度に空くことで「機械に触れない内部」にも存在します。
そのため、粉よりも実際の表面積は大きくなり、水など液体に触れやすくなる分、溶けやすくなります。
粉末スティックの配合・充填ともに①~④の考え方を元に設計されています。
(流動性を確保するため、造粒物だけではなく賦形剤としてセルロース・デキストリンなどを添加します)
スティックの製造工程
次に製造工程について紹介します。
1.造粒
- 栄養素以外の原料を造粒します。
※原料によって造粒工程に適するもの、適さないものがあります。その判別は工場の技術力により変わってきます。 - スプレー液の配合は原料によって最適なものを選びますが、一般的に水もしくは糊液(水+増粘効果のある原料(※))を使用します。
※粉と粉をくっつける糊の役目を果たすため、スプレー液を「バインダー」と呼びます。
2.混合
- 造粒物・栄養素および流動性確保のための賦形剤(セルロースなど)を均一に混合するため、混合機を使用します。
- 混合時間を適切に設定することで、粉が再分離しないよう、均一に混合します。
混合時間の長さを見極めるのが職人の経験と知識なのだそうです。 - 混合機の仕込み量は機械の容積および配合原料群の比重により異なります。
3.充填(個包装)
- 粉末個包装の場合は、縦ピロー機(コの字3方シール)もしくはスティック充填機(背貼り3方シール)が使用されます。
- 外圧をかけてシール不良チェックを行います。水没試験の場合には、水に沈めたときの水泡の有無により、袋にピンホール(小さな穴)が無いかどうか確認します。
- 個包装後、金属探知機を通して仮取りを行い、「包装工程(袋(箱)詰め)」へ進みます。
4.包装(袋(箱)詰め)
- 個包装を外袋に手詰めします。