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心理&人間関係編

【第4回】ミスコミュニケーションを防ぐ『情報を引き出す技術』

人は全てを話さない

人は普段、無意識でコミュニケーションをとることが多いので、「理解したつもり」「伝わっているだろう」という前提で、話が進んでしまうことがあり、結果として、話の行き違いやミスコミュニケーションが起きてしまうということがあります。

そんなミスコミュニケーションが起きてしまう、2つの原因についてお伝えしていきます。

一つ目は、コミュニケーションの代表的な特徴に、「言葉にすると多くの情報が省略される」というものがあります。

人は自分が思っていることや体験を言葉にするとき、頭の中でそのことを思い浮かべながら言葉にします。

例えば、朝食にサンドイッチを食べた人に、「今朝、何を食べましたか?」と聞くと、たいていの人は「サンドイッチを食べました」と答えるでしょう。
しかし、この答え(体験)には多くの情報が省略されています。

「卵サンドだったのか?ハムサンドだったのか?」
「家で食べたのか?カフェで食べたのか?」
「一人で食べたのか?家族と食べたのか」といった情報です。

このように、体験を言葉にすると情報が省略されることがあります。
その省略された情報を聴くことができないと、相手の話を正確に理解することはできません。

二つ目は「同じ言葉を発したとしても、言葉の定義が違う」というものがあります。

例えば「運動」という言葉の定義は人によって異なります。
ジョギングやゴルフは一般的に誰しもが「運動」という認識をしているかもしれませんが、「お風呂上がりに行っている入念なストレッチ」や「眠る前に日々習慣にしているヨガ」はもしかすると、「運動」と認識していない方もいるかもしれません。

この場合、患者様に「運動習慣の有無」について質問をしても、先生と患者様で「運動」の定義が異なれば、正確な情報を得ることはできないかもしれません。「運動」という言葉は誰もが理解できる言葉ですが、「運動」の定義はそれぞれ意味が異なります。

このように、お互いの言葉の定義の曖昧さが原因で、自分では理解しているつもりでいても、実は、相手から正確な情報を聞き出すことができていない、ということが起こります。

また、コミュニケーションにおいては「意図的に情報が隠される」というケースもあります。

例えば、
「他院で処方された薬があるが、それを飲んでいることを掛かりつけの先生に伝えたら気分を害するかもしれないから、言わない」
「不安があるけど、そのことについて質問したら先生に怒られるかもしれないから、言えない」

というように、先生と患者様という関係上言いづらいことや、心理的な理由が原因となるケースです。

このように、意図するか、しないかに関わらず、コミュニケーションにおいては、大事な情報が語られていないことがあるという前提を理解しておくことが大切です。

コミュニケーションで起こる大きな問題の一つは、双方の話が食い違ったまま進んでしまうことです。

しかし、欠けている情報を明確にする質問のスキルをマスターすることで、より多くの情報を引き出し、相手の話を正確に理解することができるようになります。
患者様は「このお医者様は私のことを分かってくれる人」と感じ、親近感や信頼感を持たれることでしょう。

この親近感や信頼感が保たれている状態を「ラポール」といいます。ラポールは全てのコミュニケーションの土台です。相手に信頼されていなければ、相手に良い影響を与えることができません。

欠けている情報を明確にする質問スキルは、信頼を作る質問のスキルでもあるのです。

後半では、欠けている情報を引き出す質問のスキルについてお伝えしていきます。